レース糸は、消耗品と言うよりも、ボビンレースはレース糸でレースを織ることなので、原料そのものです。
ボビンレースに取り組む過程で、レースメーカーはレース糸の気持ちに集中します;
・ゆがんで、でこぼこが作品表面に目立つ時、レース糸はどうして欲しいのか?
・張りが弱く、作品にたるみがある時、レース糸はどうしたら喜ぶのか?( でも強く引き締め過ぎると、切れます。)
嫌というほど、こういう自問をすることになるでしょう。
今までご紹介してきたレース用品は、レース糸の気持ちを理解するための道具と言っても過言ではありません。糸から布を織ってゆくのですから、当然のことです。
最初からメーカーを決めて、ひとつのレース糸と長く付き合う方が、糸に慣れやすいでしょう。
レース糸は、価格的には、最高級品と言ってもそれほど高いものではありませんので、始めから良いものをお使いになるのが、お勧めです。いずれ作品を織る時に用いる糸です。練習の段階から慣れておくのに越したことはありません。
レース糸とはいつも対話です。そうすれば、引き締める力が結果的に少し強くて、いきなり切れることがあっても、裏切られたと思わずに済みます。
レース糸は、銘柄、番手が織る図案に応じて決まっています。 図案よりも制作する作品を大きく/小さくしたい場合は、銘柄、番手も変わります。
図案のデザイナーが拡大/縮小する場合の糸の番手まで指示してくれている場合もあります。
銘柄でレース糸のメーカーと素材がわかります。
メーカーによって、同じ番手でも糸の太さが一致しないので、図案の指定どおりにしないと目の詰み具合が変わり、うまくデザインを再現できない場合があります。
図案が指定している糸を変えたい場合には、糸ごとの直径を比較した対照表を用いて、太さが同じ糸にするとよいでしょう。対照表は、欧米のレースメーカーが作っています。
レースメーカーが作っている対照表は、必ずしも全てのメーカーの糸が載っているわけではありませんが、載っていれば、変更の目安になります。
ボビンレースを始めた間は比較的太番手を用いるので、メーカー間の太さの相違は少ないし、作るレースの目も粗いので、銘柄を気にしなくてもよいかもしれません。
糸の素材には、絹、麻、綿などがあります。
絹レース糸は、経時品質低下や黄ばみやすいので、取り扱いに苦労する糸ですが、独特の光沢と滑らかな手触りが魅力です。また、他の糸に比べて、ほどき易いので、ウルリケのように、失敗してもほどいてやり直せるところに魅力を感じているレースメーカーもいます。滑らかですから練習用には良いかもしれません。
正直、糸が生きていて保管に苦労する点を除けば、その色の美しさは他に比べようが無いものですから、使ってみたい糸です。その製品は、いずれ変質してゆくことを考えると、はかなさすら感じる、限られた時間輝く美しさがあります。でも、長期に残す目的などには向いていないかもしれません。
麻レース糸と綿レース糸は、長期保存しやすいです。
麻レース糸は、さっぱりとした手触りが魅力です。糸の表面が毛羽立っていることとその滑りの悪さから、使う前に、蝋引きする方もいます。それでも糸を引き締める際に苦労します。
古典レースでは、非常に細い麻レース糸が用いられた作品もありますが、現在では、そのように細い麻レース糸は生産されていません。このようなごく細い糸は、制作中に切れないように、湿度が高い地下室などで織られました、その結果、レースメーカーの視力が奪われたり、さらには肺病、生命を奪われることにもなりましたが、細い糸で精緻に制作された作品は、得がたい美しさがあります。
綿レース糸は、その柔らかな手触りの一方、織り終わった後の作品に伸縮がでます。その丈夫さから、現在ある最も細いレース糸は、綿レース糸です。ボビンレースを始められた時に、お守り代わりに、もっとも細い
185 番をお持ちになるのも良いでしょう。その糸の細さは、意欲を沸かせてくれるし、励ましてくれるとも思います。
表面の毛羽立ちを押さえるためにガス処理をしたり、シルケット加工をしてシルクのような光沢を出している、上質な綿レース糸もあります。
綿レース糸で、1 m あたり、1 – 2 円、麻レース糸で、1 m あたり、2 – 4 円( 太番手のものはもう少し高いものもあります。)ですので、100
均の糸と価格的には大きな違いがないので、上質なものをお勧めしています。
【レース糸の項終わり】
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